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狩人Tシャツ推奨委員会のスタッフルーム     ~そこに空いてる穴から覗いた風景~

狩人Tシャツ推奨委員会のスタッフルーム     ~そこに空いてる穴から覗いた風景~

小さな芽≪後篇≫

―道すがら―


                                                AFRO IZM

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~≪後篇≫~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

:養成学校・闘技場:


「グルルルルル・・・・・」
「さて、いいとこ見せてやんねぇとなっ」
「とりあえず命は奪わない程度に、加減して痛めつけてやろうぜ?」

ここは養成学校に設置された闘技場。
目的は主に、養殖されたモンスターを相手の実戦訓練を中心に、
何人かのクラスで分けられ、実際に武器を使っての扱い方の指導などに使われる円形の施設だ。

今ここでは、大剣専攻クラスの戦術見学授業が行なわれていた。
この授業の解説はカイ、シュウは別の教室で特殊武器(槍などの事)に関しての講義を行なっていた。

ここで実際に戦術を披露するのはもちろんリョーと桜火。
リョーは鉄系の、桜火は骨系の大剣をそれぞれ持っていたので抜擢されたとの事。
リョーと桜火は最初は気が乗らなかった(クロウとエリーの事が心配で)が、
今回の特別講師としての報酬にさらに特別手当を出す、との条件であっさりOKしたのは過去の話。

「ギャオォォォン!!」

思わず逃げ出したくなるような咆哮を上げ、突進してくるのは“雌火竜”の二つ名をもつリオレイア。
養殖なので体格は小さいが、その咆哮は自然のままのリオレイアと同じ圧迫感をもっていた。

―ガギンッ―

「うぉぉ!?」
「桜火!!」
リオレイアの突進を大剣の特徴である大きな刀身で防御する桜火。
本人は止められると思っていたようだが、やはり相手は飛竜種、見事に押されていた。

「あ、言い忘れてたけどそいつ小さいけど馬力が凄くて生徒じゃ手に負えないんだって、ちゃんと弱らせておいてね」
「なんだと~~!!」
カイの解説に反応するリョー。
「確かに養殖モンスターを痛めつけるだけで報酬がさらにもらえるのはおいしすぎると思ったが、そんな裏事情が・・・」
「リョー!助けてくれ~~~!!」
リョーが“うまく騙された~”と落ち込んでいると、桜火が助けを呼ぶ声が聞こえる。
見ると、円形の闘技場をうまく使い、逃げ惑う桜火の姿が見えた。
「う~む、嫌な予感が・・・、クロウとエリーは大丈夫かな?」
リョーはたじたじの桜火を見ながら、クロウとエリーに何事も無いように、星の見えない空に短い祈りを捧げた―――。

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:養成学校・南の大密林地区の中心付近:


「そう言えば、時雨さんって、桜火さんと知り合いなんですね?」
少し険しい地形に慣れたのか、時雨に遅れもとらずついてこれるようになったクロウは、ふいに話題をふる。
「知り合いっていうか・・・」
「って言うか、時雨さんってどこの出身なんですか?」
「あぁ、東の国だ、桜火のいた里とはまた違う場所だけどな」
「へぇ~、そうなんですか、それで、桜火さんとは・・・」
「クロウ」
「へ?」
話をさえぎるような時雨の声。
少し強張った声だったのか、クロウは話を中断してしまう。
「俺の話はどうでもいいんだ、それよりもうすぐゲリョスの巣穴付近だと思う、周りをよく見ておけ」
「はぁ・・・・」
と、ここで時雨が立ち止まる。
「時雨さん、そう言えばさっきから立ち止まったり歩いたりしてますけど、どこか具合でも悪いんですか?」
「クロウ・・・、お前まさか、狩場に出るのは初めてか?」
「恥ずかしながら、ドンケツだったもので」
「・・・・・・」
時雨は少し落胆したような雰囲気で“休め”のポーズをとった。
「周りをよく見てみろ、ペイントの液体がどこかに垂れ落ちてるはずだ」
「あぁ、なるほどそれで・・・」
「ヤツが逃げる寸前に俺がもう一度ペイントをつけておいたから、液体はわかりやすいはずだ」
「ん~~~~、見つかりませんねぇ・・・」
「よく見てみろ、木についている葉、枝、地面、どこかに痕跡があるはずだ」
「むむむむむ・・・、あ、あそこに!!」
クロウが指差した木の枝には、桜色の目立つ色をした液体がついていた。
「正解だ、そしたら次は側に寄ってもっとよく見てみるんだ」
「どれどれ・・・」
クロウは木によじ登り、木の枝を見てみる。
すると、木の枝についた液体の向こう側にも、小さいが確かに同じ液体がついていた。
「あ、向こう側にも同じ液体がついてますよ!」
クロウが指差した方向に歩き出す時雨。
クロウは先に行ってしまう時雨のあとを慌てて追いかけようとするが、そのままバランスを崩し、木から落下する。

―ドスンッ―

「あぁ、しまった~~、痛てててて」
「クロウ・・・、鈍いんだな、お前は」
「な、この“俊足の貴公子”に向かって何を・・・」
「“鈍足の貴公子”、の間違いだろ・・・?」
そう言ってまたさっさと歩きだす時雨。
クロウは見事なツッコミに反撃する余地もないまま、時雨のあとを追うしかなかった―――。

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:養成学校・特殊業務専攻クラスの教室:


「ってワケで、槍を持った相手との戦いは、これらの点を注意して立ち回ること」
ここは養成学校の特殊業務専攻クラスの教室。
特殊業務とは、簡単に言えば狩りの対象がモンスターから人へ移ったようなものだ。
大半はギルドナイトになってしまうが、中には運営者である王宮に雇われ、他国へのスパイ、暗殺なんかもする事がある。
がしかし、この専攻クラスは覚えることが山ほどあり、最終的に卒業できる者は年間でも3名程度。
今、シュウが教えている槍術をはじめ様々な武器の知識、暗殺や変装技術、さらには対人の実戦訓練など、内容もハードなのだ。

それはともかく。

「ギャオーン!!」
『お、リョー達の実戦訓練、始まったみたいだな、ちゃんとやってんのかな~?』
闘技場近くのこの教室まで響いたリオレイアの咆哮を聞き、闘技場の状況を気にするシュウ。

「シュウさん、もし槍を投げてきた場合は・・・」
生徒の一人がシュウに質問する。
「あぁ、そん時はえ~~と」

「おわぁぁぁぁぁ!!」

『ん、桜火の悲鳴が・・・』
「よし、休憩!俺は少し闘技場行ってくるから今までの内容を紙にでもメモしとくように、んじゃ!」
シュウはよほど気になったのか、休憩をとり、闘技場へ走る。
「うへへ、桜火のやられっぷりをしっかり見ておかないとなぁ・・・」
心配していたわけではなく、ただ単にからかいに行ってみたかっただけみたいだった―――。

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:養成学校・南の大密林地区のゲリョスの巣窟:


「いたぞ・・・」
時雨が覗き込んだ洞窟の奥に、ゲリョスはいた。
「ぐっすり寝てますね~、どうしましょうか?」
クロウは自信満々にハンマーを構える。
「とりあえずはお前が叩き起こしてやれ、それと注意点が一つある」
「なんでしょう??」
真面目な時雨の口調に、握っていたハンマーを置き、聞きに入るクロウ。
「お前の武器についてだ」
「ハンマーのことでしょうか?」
「いや、お前自身の得意とする事のほうだ」
「はぁ・・・」
「お前の武器は、天性の距離感だ」
クロウは驚いた様子だ、まさか自分にそんな才能があるとは本人も気付かなかった事らしい。
「さっきの戦闘で、攻撃を最短距離でかわしたり、ハンマーの一撃をちょうどよく頭部に当てたりしてるところが目に付いた」
「やはり、ボクは天才だったんですね・・・」
時雨の褒め言葉に、自信満々な相づちをするクロウ。
「ただ弱点は、いちいち攻撃のときに技の名前かなんかは知らないが、それを口にすることだな」
「なんと・・・」
「そんな事喋ってる時間があったら、さっさと攻撃することだ、それでさっきは避けられちまったんだからな」
「わかりました」
「狩りの時は、“体は流れる水のように、心は燃える炎のように”だ、わかったな?」
「任せて下さい!」
「よし、行け!」
そう言って時雨は両刃槍を構える。
クロウはハンマーを腰だめに構え、走り出す。
『体は流れる水のように・・・か』
心の中で時雨のアドバイスを念じ、どんどんゲリョスとの距離を詰める。

「わりぃね、ゲリョちゃん・・・」

そう呟いたクロウの渾身の一撃は、ゲリョスのトサカ部分に命中。




―パキィィィン―





ガラスが割れるような音がしたかと思うと、ゲリョスが飛び起きる。


「クエェェェェェ!?」


飛び起きた時にはすでにクロウは後ろに回りこみ、自身をコマのようにして回転を始める。

「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

『あの馬鹿・・・』
時雨は溜め息をつく。

「喰らえ!岩砕k」


―バシィィン―

「ぎゃふん」
クロウはゲリョスのゴム質の尻尾に弾き飛ばされた。
鞭のようにしならせた尻尾は、凄まじい勢いでクロウの腕を弾く。
「うぅ・・・痛いよぅ」
クロウは今だ痛みが止まらない腕をさすりながら、なんとか上半身だけを起こす。
「・・・で、なぜゲリョスがお前の位置がわかったと思う?」
いつの間にか時雨がクロウの側にいた。
しかもこれもまたいつの間に製作したのか、落とし穴でゲリョスを動けない状態にしている。
「きっと、僕のステキなフェロモンの匂いがしたんでしょう・・・」
「お前、もう帰れ」
時雨の激しいツッコミが入る。
「お前が回転しながら叫ぶから、ゲリョスはお前の存在に気付いたんだ、攻撃の際は黙っていろ」
「わかりました・・・」
「とくに、回転攻撃なんかは威力が大きいぶん発動までに時間がかかるから、要注意だ」
「はい・・・」
「そろそろ抜け出すぞ、武器を構えろ」
そう言って時雨は走り出す。
「クァァァァ」
ゲリョスは穴から抜け出し、向かってくる時雨を睨む。
その眼は赤く充血し、明らかに興奮状態を表している・・・、が。

「遅い・・・」


―ザシュッ、ザンッ―


走り出した時雨は、頭の上で両刃槍を回転させ、勢いをつける。
そしてその勢いのままゲリョスの首筋に斬りかかり、さらに返す刀で翼の膜を突き刺す。
突き刺した刃をそのまま翼膜の筋に沿って斬り抜く。

「クエェェェ!?」

斬り抜かれた翼膜はわずかながら血を流し、羽ばたかせようとすると空気を掴むことができずに、バランスを崩す。
時雨がゲリョスに与えたダメージは命にかかわるモノではないが、ゲリョスの飛行能力を確実に奪った。

「これでもう逃げられないな・・・、クロウ!」
「はいっ!」

やっと痛みがひいたクロウは、ハンマーを持ち、構えている。
「ゲリョスは逃げることがもうできない、お前もここで仕留めるしかないぞ、しっかりやれ!」
「任せて下さい!」
「グエェェェ!!」

時雨とクロウのやりとりを邪魔するかのようなゲリョスの咆哮。
「ゴム質の皮にいくら打撃を与えてもダメだ!狙うのなら頭を狙え!」
「はいっ!」

クロウはゲリョスの前に立った。
『落ち着け、落ち着け・・・』
ゲリョスは目の前のクロウに向かって当然のごとく、クチバシでのついばみを開始。

―ヒュンッヒュンッヒュン―

クロウの天性の距離感で、ゲリョスのついばみは空振りに終わる。
シビレを切らしたゲリョスは、毒液を吐きかける。

―ビチャッ―

ハンマーの先端の大きな固まり部分でそれを受けるクロウ。
ゲリョスは続いて、クチバシでの噛み付きを繰り出す。

『・・・ここだ!』

クロウは後ろに一歩下がり、ハンマーの先端がクチバシに当たるように置く。
いったん攻撃を繰り出したゲリョスは、急に止まることはできない。

―ガギンッ―

ゲリョスのクチバシは、鉄製のハンマーに当たる。
クロウはその衝撃に耐えきれず、ハンマーと共によろける。








・・・・かのように見えた。


『喰らえ!桜火さん直伝・紅の渦!(ハンマーだし、紅くないけど)』



―ゴォォォォン―


「クォォ・・・」
ゲリョスの断末魔は、小さく呟くように発せられた・・・。

「はぁ、はぁ・・・」
クロウは肩で息をし、倒れ伏すゲリョスを見ていた。
「よくやったな、クロウ」
「時雨さん・・・」

時雨はクロウの攻撃の一部始終を見ていた。
「最後の攻撃は見事だった、なんだ?あの技は」
「あぁ、あれは桜火さんに教えてもらった技で、相手の攻撃を受け流して、勢いのついた攻撃を・・・って時雨さん!!」

―ドサッ―

時雨が倒れた―――。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

:養成学校・闘技場:


「喰らえっ、これが元祖・紅の渦!」

「おぉ・・・」
弧を描きながら流れる桜火の大剣は、リオレイアめがけて振り抜かれる。



―スカッ―



・・・・が、その一撃は、リオレイアの頭の上にある空気を切り裂いただけだった。

「いいか?あれは悪い例だ、ああやって声を出すと逆に集中力が乱れて大きいのは当たらないんだ」
カイが観戦している生徒達に説明をする。
「狩りの最中は、“体は流れる水のように、心は燃える炎のように”だ、覚えておかないとあんな風になっちゃうぞ(はぁと」




「ハズしてんじゃネェェェェ~~~~!!」
リョーの叫び声が、闘技場に響く―――。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

:養成学校・南の大密林地区のゲリョスの巣窟:


呼吸が荒く、うつ伏せに倒れている時雨。
背中は何かドロっとしたもので濡れていた。
「時雨さん?・・・、この色はまさか!?」
触ってみた液体の色で、予想する。

「時雨さんっ、まさか毒を・・・」
「隠しとくはずだったんだけどな・・・、ちょっと立っていられなかったみたいだ」

『あの時だ・・・』
クロウはさきほどの戦闘を思い出す。
自分がゲリョスの尻尾で吹っ飛ばされ、いつの間にかゲリョスが罠にはまっていた時。
きっと隙も無いゲリョスの目の前で罠を仕掛けている時に狙い撃ちにされたのだろう。
『僕が・・・、僕がちゃんと時雨さんの忠告を聞いてれば。。。』

「なっ、クロウ・・・」
「暴れないで下さいね、ノンストップで帰りますから」

と、そう言って時雨を背負い、さらにアイテム袋のヒモをほどき、背負った時雨と自分とを固定する。
そしてゲリョスの腹部を剥ぎ取り用ナイフで切り裂く。
「これが・・・狂走エキス?」
「そうだ、その袋の中の液体を薄めれば強走薬になる・・・」
「時雨さんは黙ってて、今は回復に努めて下さい!」

そう言って狂走エキスを原液で、少量を口に含む。

「おぉ、なんだか体を動かしていたくなってきたぞーーー」

そう言って、クロウは走り出した―――。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

:養成学校・保健室:


養成学校の保健室は、三台置かれているベッドのうち、全てが埋まっていた。
一番左のベッドにはエリーが、真ん中には時雨が、そして一番右にはクロウがいた。
もっとも、クロウはただ走りすぎた疲労が足にきているのと、狂走エキスを原液のまま飲んだ事で寝かされているだけだったが。

「おほほほほ、大変だなぁ、小物は・・・」
桜火は時雨を茶化している。
「ちょっと桜火さん、時雨さんが一番の重傷なんだからからかわないでよ」
「んな事言ったって、こう、苦しんでるやつを見るとついウズウズと。。。」
エリーの制止も聞かず、時雨に更なる攻撃を加えようと近づいていく桜火。

―ヒュンッ―

「うほぁっ!?」
桜火の頬を、時雨の投げナイフがかすめた。
どこにそんなものを隠していたのかはさておき。

「時雨!お前ってやつはまさか早く帰りたかったから仮病つかっ・・・ちょ、ちょい待て!話はまだ!」
「はいはい、アンタは本当の仮病でしょ、ここは病室なんだから異常の無い人は出てってね、ほら、早く!」
「ま、まってくれ!俺もリオレイアにやられた傷が、あぁ~~~~」

保健室の先生に首をつかまれ、追い出される桜火。
それと入れ替わりに、リョーが入ってくる。

「まったく、アイツ今度は何やったんだ~??」
リョーは“やれやれ”といった感じでエリーのベッドにやってきた。
「あの人、時雨さんをからかったのよ、命がけでクロウを守ってくれたのに」
「ほぉ~、で、肝心のクロウは?」
と、クロウのほうを見ると、クロウはぐっすりと眠っていた。
「本当にノンストップでここまで運んでくれた、しばらくは起こさないでやったほうがいい」
と、時雨が珍しく気の利かせた台詞を吐く。
「しかも桜火さんってば、アタシを見た時も大笑いして“貧弱ぅ、貧弱ぅぅぅぅ”って悪魔のような笑顔を・・・」
そう言ったエリーの拳は強く握られ、少しばかり震えていた。

「まぁそう言うなよ、エリー」
そう言ってリョーは大きな袋をエリーの足に乗せる。
「いはっっ!?」
捻挫した箇所に重量がかかり、エリーは声にならない声を上げている。
「エリーが怪我したって聞いた時、真っ先に動き出したのは桜火だぞ、“なんだって~~~~!!”ってな」
「えぇ~~」
「本当だよ、エリー」
そう言って保健室に入ってきたのはカイ。
「保健の先生に怒鳴り声で“おいっ!エリーは!?”って叫んで、保険の先生のアッパー喰らってたし」
「救えんヤツだな・・・」
時雨は腕を組み、首を左右に振って溜め息をつく。
「時雨、その救えんヤツからの届けモンだ」
そう言ってリョーは、エリーの足に乗せていた袋を時雨に投げ渡す。
時雨が不思議そうにその袋の中身を見てみる。



中に入っていたのは、時雨の両刃槍だった。



「こいつは・・・」
「時雨とクロウの武器がないってんで、桜火が“探し行くぞ”って言ったんだよ、おかげで俺らはクタクタだ」
と、リョーは椅子に座る。
「“俺ら”って、四人で行ったの?」
エリーが驚いたように聞く。
「いや、シュウはなんか授業サボったとかで説教されてたみたいだけど」
と、カイはクロウのベッドの近くの椅子に座り、クロウの顔を見る。
「・・・ったく、大人の顔になっちまってまぁ」

「う~~~ん、時雨さぁぁぁん・・・・むにゃむにゃ」
このご時世、“むにゃむにゃ”と言う寝言を聞いたのは初めてだった四人は、
保健室のみにとどまらず、養成学校全体に響くほど、ひと時の幸せの笑い声を届けた―――。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

:エピローグ:


生きる人々に希望の光を与えるハンター。
その小さな芽は、色々な経験を積み、やがて大きな木になる。
大きな木は、やがて大地に潤いを、空に綺麗な空気をふりまく。
この世界に希望をもたらす小さな芽は、今もどこかで、育ち始めている―――。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ≪終≫ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




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